【連続電波の発生の困難】 

TYK無線電話器の発明のきっかけになったとされている瞬滅火花式無線器は、放電が起こると回路の抵抗が増えて放電が瞬時に止まることを利用している。このときの振動により、2次回路に綺麗な高周波電流が発生するという原理に基づいている。

瞬滅火花式などの放電式無線器はアーク放電現象を使って送信用の信号を発生するのであるから、このアークを安定に連続的に発生する必要がある。

“レペル式”や“テレフンケン式”は、放電時の電極の発熱を放熱するに有効となる広い面積の電極が必要であったり、“プールゼン式”は複雑な構造を必要とするなど、工夫を凝らした方式が幾つか研究されていたが、いづれも、放電が続くと電極が消耗して動作が不安定になるのが、実用化の障害であった。

TYK無線電話装置の発明者である鳥潟氏・北村氏・横山氏は、電極材料や電極間隙の自動調整の手法などを研究し、アーク放電を連続的に発生させるための手法を発明し、TYK無線電話を完成させた。
TYK無線電話器の放電回路原理図
(逓信省式実用無線電話器付実地試験成績書  大正2年 電気試験所第二部 を参考に実行委員会作図)
参考文献:  
  逓信省式実用無線電話器付実地試験成績書  大正2年 電気試験所第二部
  特許第二二三四七号 振動放電間隙 鳥潟・北村・横山 明治45年6月特許
  特許第二二九六五号 振動放電間隙 起動装置 北村 大正元年11月特許
  無線電信電話のはなし 大正5年 横山英太郎 電友社

【発明・特許の概要】

@ 電磁石 M を流れる放電電流が大きくなると放電間隙 G を広げて放電電流を減らし、放電電流が小さくなると放電間隙 G を狭くして放電電流を増やすように働く自動制御機能を持つ。

A 電源を接続すると電磁石 M に電流が流れ、接点 G’を切り離す際にインダクションコイルが発生する高い電圧により放電間隙 G が放電を開始する仕組みを持つ。
放電停止後、自動的に放電を開始させる説明図
(特許第二二三四七号 振動放電間隙 
    鳥潟・北村・横山 明治45年6月特許)
放電間隙短絡時、自動的に放電を開始させる説明
(特許第二二三四七号 振動放電間隙 
    鳥潟・北村・横山 明治45年6月特許)
(C) 2011  実用無線電話発明100周年記念局実行委員会 All Rights Reserved.