木製の筐体は大きな傷や欠けなどは無く、一見すると、至極綺麗な状態に見て取れる。
目盛り板やダイヤルなどの金属部品も丹精なつくりで素敵である。
内蔵されていた電池は現在は使用されず、また、当時電源として使用されていた”ダイナモートル”は現存しないため、別途実験用の高圧電源を用意して取り組まれている。
参考文献:
逓信省式実用無線電話器付実地試験成績書 大正2年 電気試験所第二部
TYK無線電話機の修理復元(中間報告) 共同研究報告書 平成20年3月 井上恵子、若井登、小室純一
写真は全て委員会撮影
しかし、内部は経年変化もあり、また、内蔵する電池が暴れまわっての損傷はひどかったようで、コイル・コンデンサは新製されていた。
配線材も絶縁材が経年劣化し、調査と同時に新しいものに置き換えられている。
【 NICTで行われている復元活動 】
現在、NICTでは、若井先生の遺志を引き継ぎ、前野恭先生が復元を継続されている。
先生は、専門である電磁波計測・材料計測分野の研究の傍ら、TYK無線電話機の復元に取り組まれている。
復元に必要な部品は当時のものが手に入るはずもなく、NICT内部の工房にて自製するなど、研究開発支援室の小室さんとともに、この時間を要する作業に取り組んでおられる。
日本の研究者が成し遂げた通信の歴史的な一幕を後世に伝える意義深い活動であるが、ほぼボランティアで活動されている。
記念局実行委員会では、2011年春に復元活動の見学をさせていただいた。
TYK無線電話機の命ともいえる放電部の復元作業は既に完了しているとのことである。
放電部分には、アルミ削り出しの放電ヘッドが新製されて取り付けられている。
放電動作自体の試験も完了しているが、電波を出すことは法的に許されないため、試験環境の準備をしている段階とのことである。
情報通信研究機構 電磁波計測研究所 センシング基盤研究室
主として誘電対中の空間電荷分布,電界分布の計測及びレーザー応用や、表面実装型プリント基板上の電磁波の見える化などを研究されている。平成22年には、論文「直流電圧を印加したポリイミドの可視光照射による空間電荷形成」にて、電気学会電気学術振興賞論文賞を受賞するなど、積極的な研究が進められている。
電磁波を照射すると発熱する樹脂シートを用い、その発熱から、電磁波の放射箇所を探索する技術。右の写真では赤外線カメラを用いて、発熱を検出し、電磁波の放射箇所をモニタに表示している。。
出典:
Space Charges in Polimers
http://www.5lab.co.jp/pea/index.html
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